76 ライブラリーの刉行やイベント開催などもおこなっている。 世界自然遺産の管理運営を行うための基盤としても、科学的データの整備は不可欠である。知床財団は、知床の動植物やエコツーリズムの専門家をスタッフとして有し、調査研究、害獣駆除、ネイチャーガイドの養成と斡旋、バスガイドなどの研修、一般啓蒙活動、ビジターセンターなどでの委託業務、学校教育、出版など多岐にわたる事業を展開し、世界自然遺産の管理運営に大きな役割を果たしている。 また、自然資源の保全と利用の方針を議論する上でも科学的知見は大きな役割を果たす。知床における海域管理計画の策定にあたっては、専門家の科学的知見が漁業関係者との合意形成に大きな役割を果たした。 奄美群島とやんばる地域においては、生物多様性を实感できる国立公園、そして森林の原始性ではなく、遺存固有種を中心とする生物多様性を価値とする世界自然遺産を目指すには、まだよくわかっていないことも多い両地域の生物多様性の解明に努める必要がある。環境省を中心としての科学的調査を充实させるとともに、関係行政機関がそれぞれ实施する調査結果、また、研究者のみならず地域の専門家の協力も得てデータを集積し、それらのデータを活用しやすい体制を整備することが必要である。 知床、白神山地、屋久島の各世界自然遺産地域、及び候補地である小笠原諸島には科学委員会が設置され科学的知見に基づく管理運営が進められている。同様の体制を事前に準備しておくことが望ましい。 ③ 観光を産業に活かす地域づくり 世界遺産がもたらす効果を地域経済が十分に享受するためには、世界自然遺産地域や国立公園の内外を問わず、また、隣接する地域も視野に入れた観光のための地域戦略が必要である。 奄美群島においてはぞれぞれの島全体で、やんばる地域については那覇市内や沖縄中部などからの観光ルートを想定して議論をしておく必要がある。 また、各地域が有する農産物や地場産業の販売促進を意図して、観光メニューの検討や特徴ある商品づくりを検討することも重要である。全国に見られる土産物の多くは、地名の入ったパッケージだけを貼りかえただけのもので、地域には小売による利益しか入らない。生産、加工、販売に至る全ての過程で地域に利益が還元される商品を開発し、さらに、ガイドツアーやエコツアーでその商品を育む自然環境や伝統的な製法などを解説することで販売につなげるなどの工夫が求められる。 また、利用拠点の有無は観光実の増加に大きく影響する。また、ガイドツアー・エコツアーの定着にも拠点となる施設は有効である。利用動線とあわせ特に拠点整備について議論をしておく必要がある。
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