平成22年度「持続的な地域づくりに資する琉球弧の世界自然遺産登録に向けた課題と方策に関する検討業務」
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74 ③ 十分な議論が行われないまま世界自然遺産になったことによって混乱が生じた具体例 具体例①白神山地の立入禁止問題 白神山地の世界自然遺産登録は、ブナ原生林を横切る青秋林道の反対運動が契機となっている。周辺地域には、山と一緒に生活してきた人が多く、しかも昭和30年代に発生した土雪流で集落が埋まった経験などから山を大切にする気持ちが強く、青秋林道に反対した。また、山を生活の舞台としていたマタギも生活の場が失われるとして反対した。 世界自然遺産登録の最大の効果は、青秋林道反対運動で守った森の保護が図られたことであるが、世界遺産というものがどのようなものかわからず、十分な説明のされなかったことから、関係町村にとっては勝手に決められたと意識が今も残っている。さらに、立入禁止の措置が取られたため混乱を招いた。 世界自然遺産登録当時、十数名のマタギが山で生活し、山が守られるならばと専門家を山に案内するなど世界自然遺産登録に協力したが、世界自然遺産に登録されたら立入禁止となり生活の場を失った。現在でもその声は根強い。 具体例②地場産業の未成熟 前述したように、白神山地における地元住民の意識は、「勝手になってしまった」、「自分には関係ない」とうものが根強い。このため、観光についても、なかなか地元がその気ならずに現在を迎えているのが現状である。これが、世界遺産効果で観光実が増えているにも関わらず、地域の産業構造に大きな変化はなく、経済状況を大きく変えるほどの効果は享受できていないことにつながっている。 ある役場担当者からは、地場産品については、高齢化が進み産品を作る人がいなくなってくるため、早めに手を打っておくことが重要であり、第1次産業だけで利益はあまり大きくならないため、加工、付加価値化は必要との助言を得た。

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