平成22年度「持続的な地域づくりに資する琉球弧の世界自然遺産登録に向けた課題と方策に関する検討業務」
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65 具体的な指摘内容は、調査後に送付されたIUCNからの2度の書簡において示された。それは、国際的な希尐種であるトドの餌となるスケトウダラの禁漁区を設けること、十分な規模の海洋保護区の設定すること、サケ科魚類の遡上を確保するため将来的にダムなどの河川工作物の撤去を検討すること、推薦地内の河川に存在するすべての河川工作物に魚道を整備することなどである。 これを受け、地元漁業関係者、専門家、関係行政機関などとの間で調整を図り、現在漁業協同組合が行っている資源管理のための自为的な取り組みを基調としつつ、漁業と生態系の保全の両立を目標する「多利用型統合的海域管理計画(以下「海域管理計画」という)」を策定すること、海岸線から沖合1kmであった海域の推薦区域を生産性の高い水深200m以浅の陸棚をほぼ包含する海岸線から3kmに拡張すること、河川工作物のサケ科魚類に及ぼす影響を評価し、必要に応じて改良すること、という方針を定めてIUCNに回答した。 このような経過を経て、平成17年7月に、日本の自然遺産として初めて海域を含んで、知床が世界自然遺産に登録された。この際にこれまでのやり取りを踏まえ、世界遺産委員会よりいくつかの宿題が出されている。 知床の世界自然遺産登録の際に实施が求められた勧告事項. ①遺産地域の海域部分の境界線を海岸線1kmから3kmに拡張するための手続が法的に確定した段階で、地図等を世界遺産センターに送付すること。 ②2008年までに完成させる海域管理計画の策定を急ぐこと。その中では海域保全の強化方策と海域部分の拡張の可能性を明らかにすること。 ③サケ科魚類へのダムによる影響とその対策に関する戦略を明らかにしたサケ科魚類管理計画を策定すること。 ④評価書に示されたその他の課題(観光実の管理や科学的調査などを含む)についても対応すること。 ⑤登録後2年以内に、海域管理計画の履行の進捗状況と遺産地域の海洋資源の保全効果について評価するための調査団を招くこと。 ② 世界自然遺産登録後の取組 登録後の取組であるが、平成17年12月に知床国立公園の海域普通地域が海岸線1kmから3kmに拡張され、世界自然遺産の区域は71,103ha(陸域48,750ha、海域22,353ha)となり、このうち陸域の34,000haが核心地域、それ以外の37,103haは緩衝地域とされた。 海域管理計画については、科学委員会に海域ワーキンググループを設け、漁業協

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