平成22年度「持続的な地域づくりに資する琉球弧の世界自然遺産登録に向けた課題と方策に関する検討業務」
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64 遺産地域の河川では、サケ科魚類が著しく優占していることが重要な特徴である。 この他、爬虫類8種、両生類3種、昆虫類2,500 種以上の生息が知床半島で報告されている。 (3) 世界自然遺産として評価された顕著な普遍的価値 知床半島は北海道の北東部に位置し、火山活動などによって形成された急峻な山々、切り立つ海岸断崖、湿原・湖沼群などがあり、海岸から標高約1,600mの山頂部までの間には、人手の入っていない多様な植生が連続して存在している。また、季節海氷域としては北半球で最も低緯度に位置しており、早くから海氷が溶け、豊かなプランクトンが供給される。このプランクトンがシロザケ、カラフトマス、サクラマスなどのサケ科魚類やスケトウダラなどの多くの魚類を育んでいる。魚類はオオワシ、オジロワシといったウミワシ類、海棲哺乳類、海鳥の餌となっている。また、サケ科魚類は、海と川を行き来しており、これを餌とするヒグマやシマフクロウなど様々な生きものを支えている。 このように知床は、流氷が育む豊かな海洋生態系と、原始性の高い陸域生態系の相互関係に特徴があり、オオワシ・オジロワシ・シマフクロウといった世界的な絶滅危惧種の重要生息地となっていることから、クライテリアの(ⅸ)と(ⅹ)に合致すると判断されて世界自然遺産に登録された。 (4) 管理状況 ① 世界自然遺産登録までの経緯 知床においては、世界自然遺産登録に向けて、事前に様々な準備が進められた。平成15年10月に地域連絡会議を設置し、陸域と海域を含めた統合的な管理計画である「知床世界遺産候補地管理計画」を策定した上で、平成16年1月に世界自然遺産への推薦を行った。ここで特筆すべきは、地域連絡会議の構成機関には、関係行政機関だけでなく、世界自然遺産を目指す地元団体、漁業協同組合、ガイド協会が含まれていることで、より広範な関係者の合意形成と参加による保護管理体制が事前に構築された。 さらに、平成16年7月には、陸域と海域の統合的な保護管理に関して科学的な見地から助言を得ることを目的として、海と陸の生態系の専門家からなる知床世界遺産候補地科学委員会(以下、「科学委員会」という。)が設置された。このように保護管理体制を整えて、平成16年7月にIUCNの現地調査を迎えた。 調査に訪れたIUCNデビッド・シェパード保護地域部長は、6日間の現地調査や専門家との意見交換を通じて、知床の世界自然遺産としての価値については高く評価したが、知床を特徴づける海洋生態系と陸域生態系の相互関係に影響を及ぼす課題をいくつか指摘した。

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