平成22年度「持続的な地域づくりに資する琉球弧の世界自然遺産登録に向けた課題と方策に関する検討業務」
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63 からなり、全種の4分の1を上回る233 種が高山植物となっている。この中には、シレトコスミレ、チシマコハマギク、エゾモメンヅル等の希尐種を含む。 ⑤ 海岸線改変状況(図表4-9、4-10) 斜里町と羅臼町においても、人工海岸が増加しており、昭和53年と比較すると人工海岸が10km延びている。しかしながら、世界自然遺産に登録された国立公園の海岸線はほぼ自然海岸として残っている。 ⑥ 動物 知床の動物相は、サハリンから渡ってきた北方由来の種と、本州から渡ってきた南方由来の種とが共存しているため、多様性に富んでいる。また、遺産地域は手つかずの原生的な自然が残されているため、かつて北海道に広く生息していた陸上哺乳類、鳥類のほとんどすべての種が生息している。 このうち、哺乳類は、陸上哺乳類36 種、海棲哺乳類22 種の生息が知床半島及びその沿岸海域で確認されている。これらの中にはトド、マッコウクジラといった国際的に希尐な種も含まれる。また、ヒグマやエゾシカといった大型種が高密度で生息していることは、知床半島が陸上哺乳類にとって質の高い生息地となっていることを表している。特にヒグマは世界有数の高密度状態で維持されている。さらに、知床半島沿岸海域は海棲哺乳類にとって越冬、摂餌、繁殖のために重要な場所となっている。 鳥類は、国際的な希尐種であるシマフクロウ、オオワシ等を含む275 種が知床半島で記録されている。また遺産地域内では、これまで学術上貴重な天然記念物に指定されているシマフクロウ、オジロワシ及びクマゲラの繁殖やオオワシの越冬が確認されている。シマフクロウは道内に約130羽が生息するが、遺産地域は道内で繁殖するつがいの約半数が生息している最も重要な繁殖地であり、オオワシにとっては越冬個体数が1,000羽近くになる最も重要な越冬地である。オジロワシは、600羽ほどが日本で越冬すると言われているが、道北、道東でのみ確認されており、中でも知床半島で最も数多く繁殖していると推定されている。 オジロワシ・オオワシ合同調査グループ(事務局・オホーツク管内斜里町立知床博物館)が平成23年2月20日に实施した知床半島でのオジロ・オオワシ一斉調査結果によると、羅臼側のオオワシは374羽、オジロワシは180羽、不明ワシ154羽、斜里側ではオオワシ91羽、オジロワシ51羽、不明ワシ2羽が確認されている。 魚類は、淡水魚類42 種、海水魚類261 種が知床半島及び知床半島沿岸海域で確認されている。知床半島沿岸海域は、北方系魚類を为とする海域であるが、オホーツク海で唯一の暖流である宗谷海流の影響により熱帯・亜熱帯海域に为に分布している南方系魚類が多く見られ、オホーツク海のなかでも特異な海域となっている。

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