平成22年度「持続的な地域づくりに資する琉球弧の世界自然遺産登録に向けた課題と方策に関する検討業務」
70/104

62 ② 流氷 オホーツク海は、地形的・地理的条件により流氷ができる海洋として北半球で最も低緯度に位置する季節海氷域である。これは、オホーツク海の風上であるユーラシア大陸北東部が北半球の寒極にあたり、そこからの強い寒気の吹き出しにより、海水が効率的に冷却されることによる。それに加え、オホーツク海の表層は塩分、密度が低いため、冬期の海の対流が深層まで及ばないことも原因となっている。 ③ 地形・地質 遺産地域が位置する知床半島はオホーツク海の南端に突出した、長さ約70 km、基部の幅が25 km の狭長な半島であり、西側がオホーツク海、東側が根审海峡となっている。知床半島の東側には、国後島が半島に平行する形で間近に横たわる。半島の中央部を最高峰の羅臼岳(標高1,660 m)をはじめとする標高1,500mを超える山々が連なり、一部に海岸段丘が見られるほかは稜線から海岸まで平地がほとんど見られない急峻な地形である。半島はプレート運動や火山活動、海食など多様な地形形成作用により造られ、奇岩や海食崖、火山地形等の多様な景観が形成されている。 ④ 植物(図表4-4~4-8) 遺産地域の植生の大半は、現在でも原生的な状態が維持されている。自然植生の割合はA地区では97.3%、B地区では80.0%である。 海岸から山頂までの標高差は約1,600m にすぎないが、低標高域にはブナクラス域の植生が、中標高域にはコケモモ-トウヒクラス域植生が、高標高域には高山帯自然植生見られ、多様な植生が垂直的に分布している。 海岸には、断崖とその周辺の土壌未発達地を中心に高山帯・寒帯から亜高山帯・亜寒帯の植物が为体となる群落が成立する。 低標高地の森林はミズナラやイタヤカエデ等からなる冷温帯性落葉広葉樹林、トドマツやアカエゾマツ等からなる亜寒帯性常緑針葉樹林とこれらが混生した針広混交林がモザイク的に併存する。 亜高山帯では一般的な植生分布とは異なり常緑針葉樹林の発達が悪く、ダケカンバやミヤマハンノキ为体の落葉広葉樹林が広がっている。 森林限界を越えると、ハイマツ低木林が非常に広く発達し、その中に風衝地、雪田、及び湿原群落が局在している。高山植生は比較的低い標高範囲にあるにもかかわらず多様な植物群落から構成され、美しく見事な景観を形成している。 また植物相は北方系と南方系の植物が混在して豊かである。陸上の維管束植物としては、高山植物に北方系の種が多いことに加え、南方系の種も見られるなど、多様な植物相が形成されている。知床半島の陸上の維管束植物相は107 科872 種

元のページ  ../index.html#70

このブックを見る