平成22年度「持続的な地域づくりに資する琉球弧の世界自然遺産登録に向けた課題と方策に関する検討業務」
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52 関するものである。他の同様な地域が、ほとんど全面的に人間によって変容させられたため、白神に価値があるといえる」とされている。また、「日本でブナ林は白神だけではないが、外部から開発されたことのない原生的な森林の広さは他地域に勝っている。さらに当該地域は断片的なものではなく、長円形の形状で、連続する緩衝地帯に囲まれている」としており、数あるブナ林の中でも道路等で分断されていないことを高く評価している。 結果として、「ブナ林を中心とする生態系にはササ、クマゲラ、ニホンカモシカ、ツキノワグマなど他の生物も生息し、相互に影響しあって一つの機能体になっている。このように、白神山地は陸上冷温帯生態系、特にユーラシアブナ林生態系に関する研究及びこの特定の生物学的群集のモニタリングに極めて重要である」とされた。 (4) 管理状況 白神山地は評価の過程で、①推薦地域の拡大、②法的地位の格上げ、③管理体制の改善を含む管理計画の策定を勧告された。これを受け、日本政府として①推薦地域を拡大すること、②現行制度でも厳格な保護が担保されていることの確認、③関係省庁と青森県と秋田県による連絡会議を設け連携のとれた管理に努めるとともに管理計画を策定することを内容とする回答を行い、世界自然遺産への登録が認められた経緯がある。 その後、この日本政府回答の内容にそって、世界自然遺産の区域は、当初の推薦地域である10,139haから16,971haに拡張された。また、平成7年7月、白神山地の適正な保護管理の推進を図るため、関係機関相互の連絡調整を図ることを目的に、関係省庁と青森県と秋田県による地域連絡会議が設置され、平成7年11月に管理計画が策定され、白神山地の保護管理の体制が強化された。 管理計画では、世界自然遺産の価値を将来にわたって維持していくことを目標として、保全に係る各種制度の趣旨を踏まえつつ、遺産地域全体の一体となった管理を行うこととし、遺産地域を①特に優れた植生を有し、また、人為の影響をほとんど受けていない核心地域(当初の推薦地域である10,139ha)、②核心地域の周辺部の緩衝帯としての役割を果たす緩衝地域(推薦の拡大をした6,832ha)の2種類に区分して管理の方針を定めている。 管理計画についての意見募集では、核心地域への入山規制問題、遺産地域周辺部の取り扱い、管理体制の充实の必要性など様々な意見が寄せられた。特に入山規制問題については、入山は禁止すべきという意見や、入山禁止によってマタギ文化が消失するといった意見があり、地元関係者間の合意が得られていない状況ではあった。しかし、世界自然遺産登録による知名度の上昇に伴い無秩序な利用が行われることが懸念されたため、核心地域への入山規制の態様については更に検討を進める

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