平成22年度「持続的な地域づくりに資する琉球弧の世界自然遺産登録に向けた課題と方策に関する検討業務」
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43 ④ 地域における保全意識の向上 近年の世界遺産の審査においては、地域の世界遺産に対する意識や協力について重視する傾向にある。②で述べた国頭村安田区の取組は国際的にも高く評価される。 安田区では絶滅の危機にあるヤンバルクイナをノネコの食害から守るため、平成14年に飼いネコの登録を義務づけ、獣医師の協力でネコの体に飼い为などを記録したマイクロチップ(超小型の集積回路)の埋め込みを行った。集落のネコは10匹足らずだったが、飼い为らの責任感が格段に強まった。この取組は、環境省の支援も受け、国頭村、さらに大宜味、東の両村が適正飼養に関する条例が制定する契機となった。 また、傷ついたヤンバルクイナを手当てする「救命救急センター」を区内に設け、獣医師らの「NPO法人どうぶつたちの病院」と協力してヤンバルクイナの保護にあたっている。このような取組が評価され、平成17年には朝日新聞社为催の第6回明日への環境賞を受賞している。 このような地域における取組を各地区に広げていくことが、やんばるの自然の保護につながり、地域の活性化にもつながっていく。 ⑤ 持続可能な利用方策の確立 国立公園の本来的な使命は、保護とともに適正な利用を推進し、質の高い自然体験の機会を提供していくことにある。 やんばるの自然は、一般利用者が単に見るだけで満足するような類のものは尐なく、それらの多くは通常は見ることが困難であり、適切なガイドに従って対象を理解し、観察し、体験することによって大きな満足が得られるものである。このような利用形態は、いわゆるエコツーリズムであり、やんばる地域の特徴的な利用形態として地域振興にも寄与するものである。 しかしながら、やんばる地域は脆弱な環境を含んでいるとともに、エコツアーは自然環境に直接ふれあう利用であることから、自然環境への負荷を最小限にする努力が必要である。現在でも、例えば玉辻山やタナガーグムイなどで歩道の浸食が起きている。 国立公園の指定、世界自然遺産の登録に向けては、自然環境への負荷を軽減しつつやんばるの自然を体感できるツアーメニュー及びルートの検討、ガイドの人材育成、利用の調整を含むルールの策定を事前に進めておくことが必要である。

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