42 ② 外来種対策 3)⑧で述べたように、マングース、ノネコ・ノイヌの直接・間接的な影響によりやんばる地域の生態系は大きくバランスが崩され、生物多様性が減尐している状況である。特に、世界自然遺産としての価値を説明するヤンバルクイナやトゲネズミなどの遺存固有種が捕食されている状況では、世界遺産の審査の際には、将来にわたって価値を維持することに疑問を呈される可能性が高い。 マングースについては、引き続き駆除を継続し、目標通りマングース北上防止柵以北での根絶と再侵入の防止を实現することが望まれる。途中段階で世界遺産に推薦する場合には、目標達成に向けたプロセスを明確に示すことが求められる。 ノネコ対策については、国頭村安田区での飼いネコ登録制度とマイクロチップの埋め込みが契機となり(後述)、3村で適正飼養条例が策定されている。また、マングース捕獲に併せて捕獲されたノネコは、獣医師らで組織された「NPO法人どうぶつたちの病院」等により引き取られ、シェルターと呼ばれる施設で一定の期間順化飼育された後に、里親に引き取られている。 しかしながら、他地域より、ネコやイヌを捨てにくることが問題となっており、今後の大きな課題である。地域における監視を強めることに加え、全島的な普及啓発が必要である。 ③ 森林施業及び林道建設との調整 やんばる地域を含む北部地域では昭和50年頃から平成の初めにかけて多く伐採が行われた。これにより、森林の半分が二次林となっている。また、国頭村では林業従事者が1.5%を占め、森林施業と森林生態系保全との調整が極めて重要な課題である。しかしながら、やんばるの森を特徴づけるスダジイ等は、萌芽力・再生力がきわめて大きいため、この再生能力の範囲内での森林施業が景観や生物保全と両立する可能性を有しており、その特性を踏まえた管理手法の確立が必要である。それは、保全する森林と持続的に利用していく森林のゾーン分けであり、伐期の設定であり、伐り方の工夫である。 また、やんばる地域には、森林施業の展開にともなって多くの林道が整備されており、その密度は県内の他の地域と比較しても高い。林道は直接的に森林を改変することに加え、希尐種や固有種の生息域を分断する。このため、新たな林道の開設は、希尐種や固有種の分布や世界自然遺産の予定範囲を十分に勘案した上で行う必要がある。また、保全する森林と持続的に利用していく森林のゾーン分けが出来たならば、不必要となった林道は照葉樹林に積極的に戻していくなどの事業を検討すべきである。 加えて、盗掘・盗採を防ぐための森林パトロールを林業従事者にお願いすれば、自然環境の保全と雇用の確保の両立が可能となる。
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