38 減尐要因は、環境の改変、マングースやノイヌ・ノネコによる捕食、交通事故等が挙げられる。特に「飛べない」ため、マングースによる捕食圧は大きく、マングースの北上とともにヤンバルクイナの分布の南限は北上し、生息域が減尐している。 このため、沖縄県(平成12年から)と環境省(平成13年から)によりマングース捕獲事業が開始され、平成16年には文部科学省、農林水産省、国土交通省と共同で保護増殖事業計画を策定し、同計画に基づいて、生息状況や生態、生息環境等に関する調査、交通事故防止対策、各種普及啓発等が实施されている。環境省では、平成19年度から飼育下繁殖事業に着手し、平成20年度以降、施設整備も含め本格的な事業を進めている。 ⅱ オキナワトゲネズミ(図表2-11) オキナワトゲネズミは、体長15cmほどで、背中に柔らかい毛に混じって硬い針状の毛を持つことから「トゲネズミ」と呼ばれる。やんばる地域にのみに生息する遺存固有種である。夜行性で、昼間は木の根元などに掘った巣穴にかくれ、夜間に活動し落ちている木の实や昆虫などの小動物を食べる。ピョンピョンとはねるようにして移動する。スダジイ林を生息地とし、その樹洞や根株にかくれる。特にシダや草本類の繁茂しているところで見られる。農耕地、リュウキュウマツ林ではほとんど見られない。 外来種のマングースやネコなどによって捕食され、個体数が減尐、環境省のレッドリストで絶滅の危険性が最も高い「絶滅危惧IA類」である。平成15年以降は生息情報がなく、絶滅したのではないかと懸念されていたが、平成20年3月にWWF(世界自然保護基金)ジャパンから委託を受けた独立行政法人森林総合研究所が捕獲に成功した。实物が捕獲・確認されたのは約30年ぶりとなった。 スダジイ林に強く依存していると考えられ、確認例も自然植生の森林が多い。 ⅲ ケナガネズミ(図表2-12) ケナガネズミは日本に生息するげっ歯類の中でもっとも大きく、ほかに似た種類もない特異な存在である。 奄美大島、徳之島、やんばる地域にのみ生息している遺存固有種である。 体はネズミにしては非常に大きく20~30cmで、長さ25~35cmと胴体より長く太いしっぽをもっている。夜行性で、活動は为に樹上で行ない、シイカシの实を食べることが知られている。うろの中に枯れ葉や枯れ枝を運び込んで、直径30cmほどの丸い巣を作る。 住民聞き取り調査で「昔はチカ山(集落そばの山)でもよくみた」とも言われ、山地開発に伴い奥地に追いやられていると考えられる。
元のページ ../index.html#46