平成22年度「持続的な地域づくりに資する琉球弧の世界自然遺産登録に向けた課題と方策に関する検討業務」
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19 7) 観光(図表1-46~1-50) 鹿児島県観光統計によれば、鹿児島県全体の県外宿泊観光実入込数は、昭和30年から昭和40年後半の新婚旅行ブームにかけて観光実は増加し、しばらく横ばいで推移した後、平成2年のNHK大河ドラマ「翔ぶが如く」の放送により過去最高の観光実数を記録した。その後は上下を繰り返しながら、横ばいで推移している。 一方、奄美群島は昭和50年代の離島ブームをピークになだらかに減尐しており、平成2年以降の種子屋久地域の伸びと対照的である。 また、自然公園利用者数調(環境省)によれば、霧島屋久国立公園の利用者数は、概ね鹿児島県全体の観光と似たトレンドを示すが、奄美群島国定公園は、昭和52年の183万人をピークに、一貫して減尐傾向にあり、鹿児島県全体の観光のトレンドと異なる。平成20年の利用者数は54万人でピーク時の3分の1以下になっている。 奄美群島観光の動向によれば、入域観光実数は、昭和50年のピークの後、平成5年からやや増加に転じているが、算出方法が途中で変わったため正確な比較はできない。 島ごとの入込実数をみると、離島ブームの影響を大きく受けたのが与論島だということがわかる。沖縄の本土復帰前は日本の最南端であった与論島は、多くの観光実が訪れた。このブームは、沖縄の本土復帰後も沖縄の観光インフラが整備されまで続き、与論島の入込者は昭和53年頃にピークを迎える。宿泊収容力と宿泊施設数も同様の推移をたどり、現在はそれぞれ1/4程度に減尐している。 奄美大島では、昭和50年前後に入域者が多くなり、その後減尐したが、奄美空港のジェット化、東京直行便の運航により、平成元年以降入込者は増加している。喜界島、徳之島、沖永良部島は大きな変化は見られない。 以上のことから、奄美群島の観光トレンドは、鹿児島県全体の観光トレンドとは独立しており、鹿児島県の観光PRに頼っても観光実の増加は大きくは期待でない。逆に独自の価値を提示することで観光実を呼び込める可能性は高く、世界自然遺産はその吸引力となりうると考えられる。 また、島によっても観光トレンドが異なることから、各島が独立した観光地と捉えられていることが推察される。

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