平成22年度「持続的な地域づくりに資する琉球弧の世界自然遺産登録に向けた課題と方策に関する検討業務」
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18 5) 森林・林業(図表1-42.1-43) 奄美地域の森林は、総面積の67%を占めており、その97%が奄美大島と徳之島にある。このうち約9割が民有林となっており、前述したようにほとんどが二次林である。 戦前は、集落を中心として生活や祭祀等のための日常的、伝統的な利用が中心であったが、その後、産業としての林業に転換していった。 林業としては、地域での建築用材生産の他は、昭和30 年代までは枕木生産を、近年は、建築構造材や集成材化などによる建築用途への活用、パルプチップ生産を中心として行われている。 林業生産額は、昭和後期から平成初頭にかけてチップ材を中心に大きく増加し、ピーク時(昭和60年)の生産額は49.6億円に達したが、その後は急激に減尐し平成10年以降は5億前後で推移した。しかしながら、平成19年度の以降、外国産木材の入荷減尐に伴い、国内産木材の需要が増加し、奄美においてもチップ材確保を目的とした林業が再開され、林業生産額が大きく伸びて平成20年度は16.5憶円となっている。 6) 奄美復興・振興・振興開発事業(図表1-44、1-45) 奄美群島の振興開発については、これまで復興事業、振興事業とそれに引き続く振興開発事業がそれぞれ復興・振興・振興開発基本計画に基づき实施されてきた。 事業費は平成10年度の1,000億円をピークに減尐し、平成20年度は約半分の500億円となっている。また、事業費の減尐に伴い、建設業人口の減尐も見られている。 平成21年度~平成25年度の「奄美群島振興開発計画」では、振興開発の方向として、「世界自然遺産登録を視野に入れた人と自然が共生する地域づくり」が盛り込まれた。また、これまでのハード事業中心の振興開発から、雇用創出を目標とするソフト事業への転換が図られている。 世界自然遺産への登録とこれを活かした地域づくりに向けては、照葉樹林再生、エコツーリズムの展開、利用施設の整備など振興開発事業と連携をとって進めることが必要である。 国立公園の指定後には、国立公園内の一部については、環境省の直轄事業により利用施設が整備されるであろうが、周辺地域などについては振興開発事業が担う場面が多いと思われる。このため、公園内外を問わず、島全体の利用のデザインや整備の方向性を連携して検討し、同じ方向性のもとで役割分担を行って整備を行うことが、魅力ある地域づくりには求められる。

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