平成22年度「持続的な地域づくりに資する琉球弧の世界自然遺産登録に向けた課題と方策に関する検討業務」
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12 密度地域における効率的な捕獲作業の検討を進めている。根絶の途中段階で、世界遺産に推薦する場合には、根絶に向けたプロセスを明確に示すことが求められる。 マングース以上に、ノネコ・ノイヌについては問題とされる可能性が高い。近年の世界遺産の審査においては、地域の世界遺産の対する意識や協力について重視する傾向にある。ノイヌ・ノネコについては地域住民の無責任な放任飼育や遺棄意識の問題であり、意識の表れとも捉えられる。 このため、奄美市で策定中の「ねこの適正飼養条例」を郡島全体に広げるとともに、普及啓発などによって、新たにノイヌ・ノネコを生み出さない状況を作ることが必須である。 ③ 森林生態系の保全に向けた管理・再生 希尐種や固有種が多く生息する奄美大島及び徳之島の森林は、二次林が9割を占める。この二次林の取扱いが重要となる。 前述した「奄美地域の自然資源の保全・活用に関する基本的な考え方」では、「生態系管理型」と「環境文化型」の国立公園を目指すとしている。生態系を重視するとの国立公園の考え方は、昭和40年代半ばから徐々に内部化されていったが、亜熱帯生態系そのものを公園の中心の資源と捉え指定するのは奄美が初めてである。また、積極的な管理を打ち出したことも画期的である。 環境文化とは、そもそも奄美の風景は人間と自然が渾然一体とする中で成立してきたものであり、その全体としてのあり様そのものが国立公園の風景、資源であるという考え方である。さらに言えば、国家や専門家によって全体の一部である自然を切り取り権威づけするのではなく、地域の側の感覚や日常性に立った公園を強く意識したものである。環境文化とは直接的には人文景観の公園としての内部化であるが、間接的には地元の風景、自然観の内部化、住民の風景への意識を重視して公園のゾーニングそのものがなされることを意味する。集落の裏山の二次林の森はそのままで価値がある。またリュウキュウマツ林や照葉樹の萌芽林は、その半ばはこれまで通りの適度な人間の干渉を認め、残りの部分については原生林的自然の回復に向けて今度は人間側が積極的に関与していくことが望まれる。 具体的には、アマミノクロウサギ及びアマミトゲネズミの分布が島の南北に分断されていることから、この間の二次林、特にリュウキュウマツ林については、照葉樹林への回復に向けて積極的に関与し、生息地をつなぐことが望まれる。 ④ 地域における保全意識の向上 ② の外来種対策でも述べたが、近年の世界遺産の審査においては、地域の世界遺産の対する意識や協力について重視する傾向にある。ノイヌ・ノネコの問題に加え、ゴミの投棄の問題や景観の保全など、郡島全域で保全意識の向上に取組むこと

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