11 5) 奄美群島地域の自然環境保全上の課題 1)で述べたように、奄美群島の世界自然遺産としての価値は、クライテリア(ix)(生態系)とクライテリア(ⅹ)(生物多様性)と考えられることから、この価値を説明する希尐種や固有種、特に遺存固有種を、生息環境を含めて将来的保全していくことが必要である。この観点から、自然環境保全上の課題として①保護地域の設定、②外来種対策、③森林生態系の保全に向けた管理・再生、④地域における保全意識の向上、⑤持続可能な利用方策の確立が挙げられる。 ① 保護地域の設定 世界遺産に登録されるためには、顕著な普遍的価値が認められるとともに、その価値を将来にわたって確实に保全するための国の保護措置が取られていることが条件となる。具体的には、奄美群島の場合、アマミノクロウサギ、アマミトゲネズミ、ケナガネズミ、イボイモリ、オットンガエル、アマミイシカワガエルなどの遺存固有種の生息地が、国立公園、自然環境保全地域、森林生態系保護地域などの保護地域に指定されることが必要となる。 現在の奄美群島国定公園は、海岸部には設定されているが、遺存固有種の生息地である森林部にはほとんど設定されていない。現在、環境省を中心として国立公園指定に向けた検討が進んでいるが、奄美大島と徳之島の森林部が世界自然遺産登録の候補地と考えられる。これら地域の重点的な保護地域指定が求められる。 環境省那覇自然環境事務所が平成21年1月に発表した「奄美地域の自然資源の保全・活用に関する基本的な考え方」によれば、国立公園として保全・活用を図る地域として、奄美固有の動植物が生息・生育するために十分な範囲の照葉樹林、特に動植物の生息・生育にとって重要な小河川などの水系や固有の植物が集中して生育している高標高部に配慮するとされ、国立公園指定の实現に向けた調整が進められている。 ② 外来種対策 マングース、ノネコ・ノイヌの直接・間接的な影響により奄美大島の生態系は大きくバランスが崩され、生物多様性が減尐している状況である。特に、世界自然遺産としての価値を説明する遺存固有種が捕食されている状況では、世界遺産の審査において、将来にわたって価値を維持することに疑問を呈される可能性が高い。 マングースについては、今後、低密度化し捕獲が困難となった地域からマングースを完全に除去し、地域的な根絶に至らしめていくことが課題である。環境省では、マングースの詳細な生残情報を収集するためのモニタリングツール(マングース探索犬,ヘアトラップ,センサーカメラ)を平成22年度から本格的に導入し、極低
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