8 ⑧ 外来種の状況 ⅰ ジャワマングース(図表1-20) 昭和54年頃にハブ対策として持ち込まれたジャワマングース(以下、「マングース」という。)は、生息域を拡大し、在来種を捕食することにより生態系等に被害を与えている。本種の森林域への分布拡大に伴い,多くの在来種が減尐している状況が明らかになっている。(独)森林総合研究所の調査では,マングースの定着域で、ルリカケス・アカヒゲ・ズアカアオバト・ホオジロ類・アマミノクロウサギの著しい減尐が示されているほか、東京大学や環境省奄美野生生物保護センターの調査では、アマミヤマシギなどの鳥類、イシカワガエル・オットンガエル・アマミハナサキガエルなどの大型のカエル類も地域的に消滅している状況が明らかになっている。十分な調査がされていないトカゲ類やその他の動物種も減尐が著しく、マングースの直接・間接的な影響により,奄美大島の生態系は大きくバランスが崩され、生物多様性が減尐している状況となった。 このため、市町村による有害鳥獣捕獲や環境省による駆除・防御モデル事業の实施を経て、平成17年度からは「特定外来生物による生態系等に被る被害の防止に関する法律」(以下、「外来生物法」という。)に基づく「奄美大島ジャワマングース防除事業」として、平成27 年度までの10 年計画で根絶を目指し、“奄美マングースバスターズ”による捕獲作業が進められている。 平成12年度から平成22年度前半までに,有害捕獲,駆除事業,防除事業を通じて、奄美大島において総計32,000頭余りのマングースが捕獲・除去されている。防除事業の前期5ヵ年が経過したが、CPUE(捕獲効率:単位努力当たりの捕獲数、マングースの場合はわなをかけた日数)は年々減尐しており、前期の目標であるマングースの大幅な低密度化には成功した。また、マングースの低密度化に伴い、アマミノクロウサギやアマミトゲネズミなどの生息状況の回復が示唆されている。 ⅱ ノネコ・ノイヌ 近年、ノイヌとノネコによる生態系への被害が懸念されている。犬や猫はもともとペットとして島に連れて来られた動物で、適正に飼養管理されていれば問題は生じないが、無責任な放任飼育や遺棄などにより、野生化してノイヌやノラネコとなる。ノイヌ・ノネコはアマミノクロウサギ、アマミトゲネズミ、ケナガネズミなど奄美の固有の生物を捕食し、深刻な影響を与えている。 平成23年2月に、奄美市はネコの飼育ルールを定めた県内初の「ねこの適正飼養条例案」をまとめ、パブリックコメント(意見公募)を实施した。登録義務化や遺棄禁止を盛り込み、早ければ平成23年10月にも施行される予定であるが、世界自然遺産を目指す上では、群島全域での取組が求められる。
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