平成22年度「持続的な地域づくりに資する琉球弧の世界自然遺産登録に向けた課題と方策に関する検討業務」
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7 ⑦ 为な希尐種の分布状況 ⅰ アマミノクロウサギ(図表1-15、1-16) アマミノクロウサギは、世界で奄美大島と徳之島のみに生息し、明治33年(1900年)に新種登録された。1属1種で、同じ祖先から進化した近縁種はアフリカのアカウサギとされているが、1400年前に分化したと考えられている。短い四肢と幅広い腰骨を持ち、かつて広く分布した原始的なウサギの特徴を有し、生きた化石と呼ばれている。 このように、かつて広く範囲に分布した種が、他の多くの地域で多種との競争や環境変化で絶滅した後も、他の地域から隔離された場所で生き残って固有種となったものを「遺存固有種」という。アマミノクロウサギは遺存固有種の代表であり、世界自然遺産を目指す上でその保護は重要であるが、個体数は減尐傾向で、1998年に奄美大島で2,600~6,200頭、徳之島で120~300頭と推定されている。 減尐要因は、環境の改変、ジャワマングースやノイヌ・ノネコによる捕食、交通事故等が挙げられる。現在、奄美大島では中央部と北部の森林に、徳之島では北部の天城岳と中央部の井之川岳の森林に生息域が分断されている。 奄美大島では平成12年より環境省による防除事業が開始され、マングースの生息密度の低下とともに、アマミノクロウサギの生息域の回復が示唆されている。 ⅱ 大陸性遺存種、島嶼間の種分化が進行中であることを明示する種の分布(動物) (図表1-18) 大陸性遺存種、島嶼間の種分化が進行中であることを明示する動物種である、アマミノクロウサギ、アマミトゲネズミ、ルリカケス、アマミヤマシギ、オーストンアカゲラ、オオトラツグミ、オビトカゲモドキ、オットンガエル、イボイモリ、リュウキュウアユ、アマミマルバネクワガタ・ウケジママルバネクワガタは、奄美大島の中央森林部に多くの種が重複して分布しており、徳之島の森林部にも分布がみられる。一方、喜界島、沖永良部島、与論島には分布が見られない。 ⅲ 大陸性遺存種、島嶼間の種分化が進行中であることを明示する種の分布(植物) (図表1-19) 大陸性遺存種、島嶼間の種分化が進行中であることを明示する植物種である、カンアオイ属、アマミテンナンショウ(オオアマミテンナンショウを含む)、クスノハカエデ、アマミカジカエデ、ワダツミノキ、アマミクサアジサイ、マルハバタケムシロ、オオシマノジギク、オキナワギク、ヒメスイカズラ、ウケユリの分布を重ねると、2種以上重複して分布しているのは、奄美大島と徳之島の森林部に集中する。

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