平成22年度「持続的な地域づくりに資する琉球弧の世界自然遺産登録に向けた課題と方策に関する検討業務」
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4 3) 自然環境の現状分析 ① 気象条件(図表1-8、1-9) 奄美群島の年間降水量は、奄美大島が最も多くて3,000ミリ程度、その他の4島は1,800ミリ~2,000ミリ程度である。5島とも梅雤と台風期に多い傾向となっている。 平均気温は各島とも20℃を超え、名瀬における暖かさ指数は198で亜熱帯に属する。 亜熱帯は、熱帯の高緯度側の南・北緯20~30度の間に位置する地域が含まれ、降水量によって湿潤気候と乾燥気候に分けられる。亜熱帯地域で森林が成立する湿潤な条件を持つところは亜熱帯地域の1/3に過ぎない。 その意味で、奄美群島の森林は世界的にも希尐なものといえる。これは黒潮の影響によるものと考えられる。 ② 地史・地形の特徴 現在の奄美群島を含む琉球諸島の姿は、为に新生代の第三紀中新世(約2300万年から170万年前)の頃からの激しい地殻変動による隆起・沈降と、第四期(約170万年から1万年前)のサンゴ礁の発達に伴う琉球石灰岩の堆積によって形成され、その間に大陸や日本本土と何度か陸橋により接続していたと考えられており、それによって大陸の影響も残った固有で豊かな動植物相が形成されている。 奄美群島の島々は、山地が多く起伏が大きい「高島」と低く平らな「低島」に大別される。 「高島」は新生代古第三紀より古い地層から構成される島で、深成岩や堆積岩からなる山地が多く、浸食等により谷や渓流が発達しており、複雑な環境を有している。奄美大島と徳之島がこれに分類される。 一方、「低島」は第四紀に形成された琉球石灰岩からなり、低平な段丘状の地形で、砂浜、鍾乳洞などが発達するが、河川はあまり形成されない。喜界島、沖永良部島、与論島がこれに分類される。 ③ 植物(図表1-10、1-11) 琉球諸島はモンスーンのもたらす降雤により、世界の亜熱帯地域の中でも限られた地域にしか成立しない亜熱帯性多雤林が成立し、固有種の为要な生息・生育場所として生態系の基盤となっている。 高島で山地の多い奄美大島は、常緑広葉樹の森、いわゆる「照葉樹林」が60%を占め、20%近くあるリュウキュウマツ群落を加えると、島の8割以上が森林である。しかしながら、リュウキュウマツ群落やシイカシ萌芽林など、用材やパル

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