平成22年度「持続的な地域づくりに資する琉球弧の世界自然遺産登録に向けた課題と方策に関する検討業務」
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94 クシマシュスラン,ムカゴトンボ,ヤクシマネッタイランをあげた。田畑(1996)は徳之島を南限としつつ日本本土に分布する植物として,コハチジョウシダ(北は伊豆半島まで),アオモジ(九州中南部まで),ナンバンキブシ(山口県まで),イヨカズラ(本州中部まで),ヒメアリドウシ(紀伊半島まで),オオシマノジギク(草垣島まで),シュウブンソウ(関東まで),アキグミ(東北まで),セキショウ(鹿児島本土まで),ヒメナベワリ(中国地方まで),ホウチャクソウ(北海道まで),ナルコユリ(本州まで)をあげている。 4.絶滅危惧種 九州南部から南西諸島地域に自生する種子植物は2900種,シダ植物は670種ある。徳之島に分布する絶滅危惧植物は93分類群にのぼる(堀田 2001,鹿児島県 2003)。現在,徳之島には,国指定・県指定の植物に関する天然記念物は無い。しかしながら,以前から,天城岳から犬田布岳に至る山地部の森林内に希尐な植物が生育している事が指摘され,徳之島の三京は,奄美大島の金作原,住用村大和村境界,住用村瀬戸内町境界,湯湾岳と並んで,自然度が高く貴重であるとして挙げられていた(プレック研究所1975)。しかしながら個々の植物についての詳細な情報は十分に集積されていない。山下は奄美群島の重要な種について自生する現存個体や集団の推定数をまとめている。それによると,奄美大島と徳之島を合わせても,シコウラン100株,タイワンショウキラン20株,アコウネッタイラン100株,タカツルラン3集団,オオカナメモチ50株が残存しているにすぎない。また徳之島固有種のトクノシマテンナンショウは30株,オオシロショウジョウバカマは30株が生育するのみで,オオアマミテンナンショウも生育地が極めて限定されている。徳之島を北限とするタイワンアマクサシダは20株である(山下 2005)。タブノキ群落がある義名山と明眼の森においては,低平地に残された希尐植物の生育地という見方もある。標高150m程度の石灰岩大地で,社寺林および水源涵養林として保護されてきた。明眼の森は標高160m内外の隆起石灰岩で,かつては琉球国按司の館があり,ユタ神の礼拝所があって,風葬地でもあるため,開発を免れてきた。環境省が絶滅危惧種として指定しているマツバラン,オオタニワタリ,コモチナナバケシダ,オオアマミテンナンショウ,オオカナメモチ,ヤエヤマネコノチチ,リュウキュウクロウメモドキ,シマサルスベリ,アコウネッタイラン,ツルラン,フウラン,ボウラン,カシノキランが確認されている(寺田ほか 2010)。

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