平成21年度「自然共生型地域づくりの観点に立った世界自然遺産のあり方に関する検討業務」報告書
8/160

5 2.3 主たる指標分析と抽出 (1)主たる指標分析 この項の最後に「屋久島図表」としてまとめた各種データを分析し、指標抽出のために行った作業成果について整理した概要は、以下である。 「各種指標から見た屋久島の概況」 屋久島は大きな島である。(図表1)離島振興法にいう離島の中では(橋が架かると離島ではなくなる)全国で4番目、面積504平方キロ。5番目の種子島は445平方キロである。屋久島でもっとも高い山である宮之浦岳は標高1936メートル、これは九州ではもっとも高く、全国の離島でも最高標高である。(図表2) 海上の独立島で高標高ということが島の生物相を規定し、図表3にみられるように亜熱帯から亜高山帯まで垂直に分布している。宮之浦岳周辺は森林限界を超えてヤクザサ帯である。 年間降水量は4300ミリ前後、日本でもっとも多雨地帯となっている。(図表4)もっともこの数字は島の北東にある観測所のもので、島の中腹では8千から1万ミリ降るともいわれている。 屋久島の人口が最大だったのは1960(昭和35)年の24010人であり、その後漸減して現在の13千人程度になった。近年は微増、横ばい傾向にある。これは地方の他地域とりわけ離島と比べるときわめて特徴的な減少であり、おおむね1993年の世界遺産条約の効果だと思われる。(図表5,6,7) 島の90%は森林が占める。(図表8,9)その森林の8割は国有林であり、有名な林業地域であるが、実態は国有林林業で、民間林業は発達していないという意外な特徴がある。地形条件から農業は脆弱であるが、遺産登録後ポンカンなど果実について顕著な伸びを示している。(図表11,12) しばしば誤解されがちであるが、地方の離島、山村においても就業者比は3次産業が最大である。屋久島においても66%が3次産業に就業している。遺産登録後の観光関連の隆盛はその傾向をより加速している。(図表13,14) 1953年以降の離島振興事業費の累計は2586億円、2006年の総事業費は52億円。土地改良、道路、港湾の公共事業がもっとも多い。(図表19,20,21) 観光客は着実に増加している。(図表22)なんといっても世界遺産効果が大きいが、1986年に就航した高速船の影響も大である。滑走路の制約からプロペラ機しか就航せず、70人程度の飛行機では団体客などへの対応が十分ではない。逆に言えば、ジェット機が就航していないことがまだしも救いといえないこともない。大きな島であり、比較的強靱な自然の地域であることから、40万人程度の観光客数はそれだけで問題とするにはあたらないが、山岳地域の過剰利用問題は深刻である。縄文杉があまりにも有名であるため、直近2009年の数字では約10万人が縄文杉を目指して登山している。(図表

元のページ  ../index.html#8

このブックを見る