平成21年度「自然共生型地域づくりの観点に立った世界自然遺産のあり方に関する検討業務」報告書
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65 考えられることから、これら地域の重点的な保護地域指定が求められよう。 「産業別就業者比率」(図表23) 群島全体の3次産業就業者比率は62%。2次20%、1次は18%(2000年国調)である。1955年の国勢調査では1次76%、2次7%、3次17%であったから、半世紀で1次と3次がほぼ逆転したことがわかる。3次比62%のうち半ばの28%はいわゆるサービス業就業者となっている。2次20%のうち14%は建設業であり、次項の奄美振興事業費と併せて考えると奄美振興事業に依存していることがより鮮明となろう。 「奄美群島振興事業費」(図表26,27) 1954年以降、広義の奄美振興事業費の累積は2兆円にのぼる。事業時のピークは1998年の1千30億円、2007年には525億円とほぼ半減となった。2009年の政権交代、公共事業縮減の影響を受け、2010年度予算はさらに減少する見通しである。この振興事業費の特徴は事業量全体に占める公共事業費の比率が高いことで、2003年度では総事業費の7割が公共事業であったといわれている。上記2次産業就業者比の推移、上昇と併せて考えると興味深い。公共事業のうちの第1は農業基盤整備、第2は道路、3番目が港湾整備となっている。なお、公共事業の効果の是非については軽々に判断しがたい面がある。奄美群島におけるインフラ整備は依然として充分とは言い難いものがあるし、これまで振興事業によって生活生産の基盤は曲がりなりにも整ってきたことは否めない。その一方図表14に見るごとく、特に海岸部の護岸等による海岸線の人工化は確実に進捗して自然改変の印象を強く与える結果ともなってきたことも事実である。 「観光客数推移」(図表28) 奄美群島の年間観光客数は2006年で40万人である。1975年に42万人であったことを考えると、ほぼ横ばい乃至微減傾向にある。もっとも多いのは奄美大島の23万人、次いで徳之島の6万6千人と島の大きさに比例している。与論島は、1985年の9万9千人から、2006年には3万7千人と激減しているのが目を引き、また群島全体の観光客数が横ばいである現状の原因と考えられる。与論観光の低迷は、沖縄との差別化ができず、沖縄観光の隆盛の陰に隠れてしまったからだと思われる。また、関東関西から航空機利用で来る際、沖縄に比べて運賃が高いことも背景にあるだろう。 自然、文化のパターンがそれぞれ異なる5つの島を有しながら、年間40万人規模の観光客数はあまりにも少ない数字である。資源のポテンシャルと世界遺産登録への動き、それに先立つ国立公園指定、森林部の特異な生態系などが全国に情報発信されれば、観光客が増加することはほぼ確実だと思われる。 「所得推移」(図表37) 2006年の1人当たり郡民所得は198万円、2000年が200万円だからむしろ微減傾向

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