平成21年度「自然共生型地域づくりの観点に立った世界自然遺産のあり方に関する検討業務」報告書
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61 3 奄美群島におけるケーススタディ 3.1 奄美群島におけるケーススタディの考え方 平成15年の世界自然遺産候補地に関する検討会において候補地に選ばれた奄美群島を含む琉球諸島は、現在、世界自然遺産への推薦を目指して、その保護担保措置の強化や管理上の課題解決を進めているところである。遺産価値と共生できる林業や観光業などの地域産業の確立が急務であるが、そのためには、遺産登録または登録を目指した活動を通じて、地域の産業や島民意識がどのような影響・効果を受けるのか検討することが必要である。 そのため、奄美群島の概要を整理した上で、遺産登録または登録を目指した活動を通じて、地域の産業や島民意識がどのような影響・効果を受けるのかについて、以下の観点から把握するための指標を抽出し、現地調査及び資料収集業務を行い、それらを踏まえて、世界自然遺産候補地である奄美群島の自然共生型地域づくりの課題解決に資する検討を行った。検討の主たる視点は以下。 ①島民の自然に関する意識(地理的認識など) ②自然ガイド、一次産品の地域ブランドなど、遺産登録によって大きく影響を受ける可能性のある産業の状況 ③遺産候補地であることが地域イメージにもらたす効果 ④遺産候補地であることによる島民の意識変化 ⑤遺産登録にむけた自治体等の施策 3.2 奄美群島の概要 奄美とは、もっとも北の奄美大島から最南部の与論島までをいう。大島、喜界島、徳之島、沖永良部島、与論島の5つがある。(図表1,2,3,4,5,6)大島には、加計呂麻島、請島という大きな属島がある。北から南まで約200キロ、本土から380キロで大島最北端、屋久島と奄美大島の間にはトカラ列島がある。トカラ列島の中央部悪石島と小宝島の間に渡瀬線という生物地理境界があり、ここで生物相が温帯と亜熱帯に大別される。市町村数は1953年の20が現在12市町村となった。 直近の奄美全体の人口は12万6千人、もっとも人口が多かった1950年は22万人だから10万人近く減少した。しかし100年前、1908年の人口は18万人だ。当時の全国人口が5千万人だったことを考えると、奄美は基礎的扶養力という点ではかなり豊かな地域であったといえる。現在の島別人口は、大島6万8千人、喜界島8千3百人、徳之島2万6千人、沖永良部島1万4千人、与論島5千6百人。 5つの島は高島と低島に分けられる。隆起珊瑚礁の島が低島で花崗岩が海底から押し上げられたのが高島である。大島、徳之島が高島、その他の3つが低島だ。大島の最高標高694メートル、徳之島が645メートルに対して、喜界島204メートル、沖永良部240メートル、与論島は97メートルしかない。森林が発達しているのは大島と徳之島

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