平成21年度「自然共生型地域づくりの観点に立った世界自然遺産のあり方に関する検討業務」報告書
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14 目的によって大別すれば以下の5つになる。 ・ 屋久島全域における自然、環境の底上げを目指すもの、あるいは理念宣言的なもの-1993年「屋久島憲章制定」(上屋久、屋久両町)、1995年「環境基本条例」(両町)、「ふるさと景観条例」(2009年屋久島町) ・ 保護の強化にかかるもの-1992年「森林生態系保護地域指定」(林野庁)、「国立公園区域拡張」(2001年環境省) ・ 利用規制、利用の質の向上にかかるもの-「荒川登山口マイカー規制」(2007年屋久島山岳利用協議会)、「登山者カウンター調査」(2005年環境省)、「屋久島エコツーリズムモデル事業及び関連調査」(2004年~、環境省) ・ 自然調査にかかるもの-「屋久島科学会議」(2009年~環境省、林野庁) ・ 普及啓発にかかるもの-「屋久島環境文化財団各種啓発事業」(1993年財団設立~) これら以外に屋久島のみを対象としたものではないが、屋久島に深く係わる施策として1988年ウミガメ保護条例(鹿児島県)、2003年希少野生生物保護条例(鹿児島県)がある。 以上の施策はほぼすべてが世界遺産登録(乃至登録への前段階の)を大きな動機としてなされたものであり、世界遺産の与えた大きな施策への影響が再確認できる。また登録前の段階で、遺産登録の是非も含め徹底した議論が地域でなされ、地域の大きな方向性について合意が出来上がっていたことが、地元自治体などの以後の施策に反映した結果である。 2.5 遺産を活用した自然共生型地域づくりの課題と解決の方向性 屋久島における世界遺産登録後の大きな変化、現象を整理すると、以下のようになる。 ● 世界遺産は劇的な変化を島にもたらした。現象的には観光客増として現れた ● 観光が先導する形で経済も浮揚した ● 人口は横ばいないし微増という、全国の離島としてはきわめて特異な傾向を示している ● 遺産登録は観光に直接的効果をもたらしたが、間接的にはポンカン、タンカンなどの付加価値化、いわば屋久島ブランド化をももたらした ● エコツアーガイドという新職種が、遺産登録前のゼロから200人にまで増加した ● 間接的効果の1つとして、総合病院の開業も加えることができる(遺産登録までは診療所までが可能という行政的整理) ● 一方、世界遺産による変化がもたらしたマイナス面もあり、縄文杉登山を中心とする奥岳地域の過剰利用問題がその典型。当該地域の

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