平成21年度「自然共生型地域づくりの観点に立った世界自然遺産のあり方に関する検討業務」報告書
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134 こうした相違点を十分認識した上で、外的な状況変化(この場合は世界遺産登録及びそれにともなう経済変化)が、地域にもたらすであろう変化に対する賢明な対応方策を考えておくことはきわめて重要である。本調査の役割はそこにある。 <奄美屋久島・主要社会指標>を見ると、屋久島と奄美の総生産額、人口など基礎的数字の伸びの差は歴然としており、その主因は1993年の屋久島世界遺産登録によって引き起こされたものと推定される。 影響は観光客増という形でまず現れ、それが地域経済を活性化させて、主としてIターンによる若者の増加、人口増をもたらしていると考えられる 奄美の傾向は、奄美のみならず地方地域の典型的傾向と読むことができる。<東京の人口推移>はいかに激しく東京圏への一極集中が進んだかを表している。東京の増加分の大部分は地方圏からの移動と考えられる <東京の人口推移> 屋久島縄文杉への過剰利用問題を考えると、奄美とりわけ大島の中央森林部ではあらかじめ予防的対策を取ることが求められる。国立公園による利用規制地域指定、ガイド付きツアーの義務付けなどが考えられる。この種の規制はいわば緊急避難的なものである 観光対応としてより根本的に考えられるべきことは、奄美への観光客増が必然だと考えた上で、マス利用と選択的利用(エコツアーが代表的)の仕分けを地域条件によって明確になすこと、観光利用の(集中と)分散対応を明確にすべきことである

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