平成21年度「自然共生型地域づくりの観点に立った世界自然遺産のあり方に関する検討業務」報告書
135/160

132 具体的には、水系沿いなど小規模生態系のきめ細かい保全措置、地域の習俗的保全意識と制度的保全措置の重ね合わせ、伝統的自然利用と利用施設の一体化、大島では4割強を占める二次林の再生または利用の方針、等々を重視する必要があること これらには、屋久島で整理された経済的指標などを援用した分析、計画管理技術が必要となること これらが地域に理解されるためには、説得力を持った説明のための素材と手法が必要であり、本調査の成果等を使いつつ遺産や国立公園への理解を深めるための機会を積極的につくるなど普及に努めること。また、奄美に固有の生態系や地域文化に立脚した保全活用の方策について検討すること 4.2 屋久島及び奄美の比較について わが国の世界自然遺産登録地は、平成5年の屋久島及び白神山地、平成17年の知床の3カ所である。平成5年にわが国で初の世界自然遺産として2地域が登録された後、平成15年に開催された専門家会議により知床、小笠原諸島、琉球諸島の3つが次の最終的候補地として挙げられた。 知床はすでに登録され、小笠原は平成22年1月に世界遺産委員会に日本政府としての推薦書を提出したところである。 琉球諸島については、遺産登録の前提条件である保護担保措置、具体的には国立公園等の指定及び遺産登録について、環境省などが主催する専門家による各種委員会を継続して行い準備を進めている。 これまでの自然遺産登録3カ所について見ると、遺産登録がもたらす効果はまず急激な観光客の増加減少として現れ、 ①まず観光が先行して地域経済に大きく貢献し、 その一方で、特定地域に利用が集中して、 ②過剰利用による自然破壊が起きるなどの弊害 も指摘されているところである。 また、登録への地方自治体等の要請など全般的状況は、平成15年に環境省、林野庁共同事務局による専門家会議によって、全国を精査した上で富士山など19カ所を候補地とし最終的には上記3カ所に決定した経緯等から、やや下火になっている。しかし地方活性化方策の有力な1つとして、登録への要望は依然として大きなものがある。 屋久島の自然環境保全上の問題は、シカやサルの増加と農林業被害、ウミガメ保護、ヤクタネゴヨウ保存、タヌキなど外来種増加等様々の課題がある。 しかし、現在の屋久島における自然保護上最大の課題は、縄文杉登山を中心とする奥山山岳部での過剰利用問題である。平成5年の遺産登録後、入島観光客数はほぼ4倍の年間40万人になり、登山者数は昨年値で約10万人と登録前の10倍近い数字となっている。登山利用は5月の連休と夏休みの8月1ヶ月のほぼ40日間に集中して、し尿や踏圧による

元のページ  ../index.html#135

このブックを見る