平成21年度「自然共生型地域づくりの観点に立った世界自然遺産のあり方に関する検討業務」報告書
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8 さがわかる。離島振興事業が1953年に開始されて以来の総事業費は2586億円と巨額である。生活基盤整備として必要不可欠なものも多かったが、港湾(14億円)、道路(12億円)、土地改良(10億円、いずれも2006年度)が上位3事業であり、おおむねこの配分で推移してきたことから、生産基盤整備重視かつ公共事業中心で進められてきたことを特徴としている。 「観光客数推移」(図表 22,23) 入込観光客数は、おおむね増加傾向で推移しており、2006年度で33万3千人、直近の推定では40万人に及んでいるとの数字がある。遺産登録の前年の1992年に高速船が就航した影響も大きいが、なんといっても世界遺産登録のインパクトが屋久島の全国的な知名度を一気に高め、それが観光客増につながったとの見方が妥当であろう。昭和の終わりから平成の初めにかけての観光客数は7万人弱であり、遺産登録後5~6倍に増加したことになる。 宿泊収容力は、1990年には1530人であったが、2008年には3240人とほぼ倍増している。屋久島の遠隔地であるという立地特性から、宿泊型の観光地が形成されてきた。 利用で留意すべきポイントは、縄文杉登山を中心とする山岳利用が利用全体の4分の1、10万人にも及ぶことで、ゴールデンウィークと夏休み期間の約40日間に集中していること、遺産登録前の山岳利用は1万人以下であったと推定されること、等から、屋久島の山岳部利用の現状は明らかに過剰利用の段階に至っているということである。(図表27) 「所得推移」(図表 17) 島の総生産額は1989年(222億円)と2006年(445億円)の比較では2倍になっており、観光客増がもたらした観光関連産業への経済効果は非常に大きかったと考えられる。その一方で、総生産額の伸びと1人当たり島民所得の伸び(微増)はパラレルな関係にはなっていない。遺産登録の地域経済効果は、全体としては大きいものであるが、島民1人1人にとってはさほど実感できるまでには至っていないのが現状である。この関係は上記の離島振興事業・公共事業投資についても同様の関係にあることに留意しておく必要があろう。 「文化財指定状況」(図表 34) 国指定の文化財は7件、7件とも屋久杉や動物など生物系である。もっとも早く指定されたのは屋久島スギ原始林(1954年、特別天然記念物)であり、すべてが戦後の指定である。県指定文化財は3件、ヤクシマカワゴロモ(1954年、天然記念物)の他の2件は記念物(泊如竹の墓)、無形民俗文化財(如竹踊り)となっている。 屋久島の文化財行政は、その意識において希薄であり、これは国、県の離島への姿勢だけでなく、地域においてもさほど重視してこなかったことの表れと考えられる。 ○ 指標間の関係、構造について これらの指標は、自然サイドから見た指標と人間サイドから見た指標に2分される。

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