平成21年度「自然共生型地域づくりの観点に立った世界自然遺産のあり方に関する検討業務」報告書
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7 「降水量及び標高」(図表 2,4) 屋久島の降水量は平年値で4359ミリと日本でもっとも多い。しかもこの数字は北東海岸部・小瀬田の観測所の数字であり、中腹部では8千~1万ミリであると推定されている。この降水量は、海で暖められた水蒸気を含む空気が九州一の高標高である宮之浦岳など山岳部・中腹部に吹き付けることによって大量の降雨がもたらされるものである。なお、屋久島の沿岸部は無霜地帯であるが、標高千メートル以上は豪雪地帯である。 「土地利用面積」(図表 8) 屋久島の土地利用の際だった特徴は、耕地面積率が1.9%ときわめて少ないことにある。道路、住宅地、工場用地などを加えても5%に満たず、いかに地形条件に制約されてきた地域であるかがわかる。(隣接する種子島の耕地面積は約20%)なお、耕地及び住宅地などは一部の例外を除いて海岸部から標高100メートル以内でなされている。 「植生、森林率及び国有林比率」(図表 3,8,9) 屋久島の森林率は89.6%ときわめて高い。しかもその約8割は国有林となっている。(島全面積の7割が国有林)植生は沿岸部から集落の後背にある標高千メートル前後の前岳の一部等にアカマツ、スギの植林がある他は自然林乃至それに近い植生構造となっている。屋久杉はこの島の特徴である樹齢千年以上のスギを指す名称であるが、戦後伐採が急激に進んだ(1966年が伐採のピーク)。現在は土埋木の採取が若干行われている他は基本的に伐採はなされていない。 屋久島の植生は、地形条件を反映して亜熱帯から冷温帯、亜高山植生まで垂直分布し、しかもその垂直分布が急激かつ典型的なことを特徴としている。垂直分布は島の西、旧西部林道地区、島北部の永田地区等から観察される。 「保護地域面積」(図表 35) 屋久島の自然保護地域は、原生自然環境保全地域(1200ヘクタール)、国立公園(25000ヘクタール)、森林生態系保護地域(15000ヘクタール)及び県設鳥獣保護地域(7399ヘクタール)及び地域指定ではないが文化財保護法による天然記念物(屋久杉原生林)がある。遺産登録地域はほぼ国立公園と重複して約1万ヘクタールとなっている。 保護地域は島西部の旧西部林道地区を除いて中腹部以上に位置し、遺産登録後も国立公園の拡張などがなされてきたが、いまだ充分とは言い難い。 「産業別就業者比率」(図表 14) 産業別就業比率の特徴は68.2%が3次産業に偏っていることで、1985年値と比べて20%近く上昇している。3次産業は公務、サービス業など各般に及ぶが、屋久島では遺産登録後の観光関連産業の影響がきわめて大きいと考えられる。(観光については後述) 「離島振興事業費」(図表 19,20,21) 離島振興事業総事業費は約52億円(2006年度)、うち国費が約33億円である。屋久島町の予算規模が約90億円程度であることを考えると離島振興事業の地域における大き

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