ラインセンサス法において、特定のルートで調査を重ねれば、植物の密度(調査経路⻑あたりの個体数)の経時変化が得られます。このデータを⽤いれば、固有種の⽣息数や外来植物の影響、外来植物の駆除作業の効果を把握することができます。しかしながら、これらの検証を確実に⾏うためには、次に⽰す2つのポイントが重要になってきます。1つ⽬のポイントは、確認した植物の写真を記録することです。こうすることで、植物の識別のミスを防ぐことができます。さらには、個体数の情報だけでは分からない植物の繁茂状況を知ることができます。2つ⽬のポイントは、確認した植物の位置を正しく記録することです。これは、対象の植物個体にラベルを貼るようなもので、経時変化の中で、その個体が除去されたのか、新しく⼊ってきた個体なのかを識別することができるようになります。 なお、調査の中で発⾒した外来植物の⼀部(特定外来植物として指定されていもの)は、外来⽣物法により、許可なく移動させることが禁⽌されています。特定外来植物については、環境省の公開する特定外来⽣物等⼀覧(https://www.env.go.jp/nature/intro/2outline/list.html)でご確認ください。また、特定外来⽣物以外の外来植物の場合も、国⽴公園特別保護地区や国有林、保安林など植物の採取等が禁⽌されている地域もあるため、許可を受けていない場合は、原則として採取等はせずに調査を⾏うようにしてください。 以上を踏まえ、本マニュアルでは、ラインセンサス法を⽤いて、植物の写真と位置情報を記録するというモニタリング⽅法を採⽤します。以下では、その具体的なモニタリング⽅法を解説します。 2 1.植物相モニタリングの調査⽅法 植物相のモニタリングでは、植物(在来植物と外来植物)の個体数や分布の経時変化を把握します。⼀⽅で、固有種の存続や外来種の影響を考える上では、それぞれの植物の繁茂の程度を知る必要があります。⼀般的に、植物の繁茂の程度は、個体数やバイオマスの密度として捉える必要があります。たとえば、⼟地の⾯積や調査経路⻑あたりの個体数やバイオマスを調査します。本マニュアルでは、調査経路⻑あたりの個体数を調査の対象とします。 調査経路⻑あたりの植物個体数を調べる⽅法として「ラインセンサス法」というものがあります。この⽅法は、事前に決めた⼀定のルートに沿って、そのルート上に出現した植物を記録するというものです。実際の作業では、林道を含めた⼀般の道路を歩いて植物を探すことになります。作業⾃体は散策を踏まえることができますので、⽐較的容易で、楽しむことができると思います。
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