外来植物とは、奄美群島に国外や国内の群島外から人の影響によって最近侵入し自然状態で生育している植物です。国外原産の植物を「国外外来植物(または帰化植物)」、国内に自生していた植物を「国内外来植物」と区別します。一方、昔から奄美群島に自然に生育している植物は「在来植物(または自生植物)」と言います。奄美大島(加計呂麻島、与路島、請島を含む)には、在来種が約1,330種、外来種が約270種存在します。なお、栽培植物の大部分も群島外から導入されていますが、畑や花壇など人の管理している範囲以外で生育していないものは外来植物とはいいません。「最近侵入した」という表現の“最近”とはいつからか、また、「管理している範囲」という表現の“範囲”とはどこまでを指すかは、曖昧なところがあります。一般に明治時代以降に侵入した植物は外来植物とされます。奈良時代以降に導入された文献記録がある梅やイチョウなどの植物、文献記録はないが日本への稲作の導入などに伴い侵入したと考えられる「史前帰化」と呼ばれる植物の扱いは、人により異なる場合があります。また、外来種には、園芸や農業利用のために導入した植物が、人が管理していない自然界に広がってしまった植物と、導入するつもりはなかったが輸入物資に混ざるなどして入ってしまった植物があります。前者の場合「管理している範囲」と「自然界」の判断が難しいこともあります。外来植物は人為的に入って来たので、最初に人間の居住地とその周辺に定着します。人の居住地には樹木が少なく明るい裸地が多いので、外来植物には裸地環境を好み、「道端雑草」と呼ばれる植物が多くなります。湿って暗い環境を好む種類が多いシダ植物や、古い森林を作る樹木には外来種は稀です。世界自然遺産地域の保全を考える場合には、道端雑草的な外来種よりも、少数種ですが古い森林に生育する外来種の対策が重要でしょう。外来植物には生育地に関して上記のような傾向がありますが、外来植物にしかない特徴というものはありません。個々の植物の名前を調べ、その植物の履歴を知って外来植物か在来植物かを判断する必要があります。そこで、以下では、奄美大島で見られる代表的な外来種20種について解説します。解説文に出てくる植物学用語を、次に簡単に説明しておきます。植物写真撮影者:ヨシススキは田金秀一郎、その他は鈴木英治。撮影場所:奄美群島以外も含む主な参考文献片野田逸郎(2019)琉球弧・植物図鑑.南方新社森昭彦(2020)帰化&外来植物見分け方マニュアル950種.秀和システム清水矩宏他(2001)日本帰化植物写真図鑑.全国農村教育協会植村修二他(2010)日本帰化植物写真図鑑第2巻.全国農村教育協会鈴木英治他(2022)鹿児島県の維管束植物分布図集ー奄美群島版ー.鹿児島大学総合研究博物館報告,18https://www.museum.kagoshima-u.ac.jp/publications/plants/map_Amami-gunto_all.pdf122.外来植物の見分け方
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